暗号資産の税務上の取扱いについて - 確定申告に向けた実務解説


近年、暗号資産(仮想通貨)取引が一般化する中で、税務上の取扱いに関するご相談が増えています。本稿では、国税庁が公表している最新の取扱いに基づき、個人投資家の方々向けに実務的な観点から解説いたします。

1. 基本的な課税関係

暗号資産取引から生じる所得は、原則として「雑所得」として課税されます。これは、給与所得などと合算して総合課税の対象となります。

2. 課税対象となる取引と計算方法

暗号資産の売の取引において利益が発生した場合、確定申告が必要となります。

売却益の計算例:

4BTCを4,000万円で購入し、0.2BTCを210万円で売却した場合

・売却収入:2,100,000円

・取得原価:(40,000,000円 ÷ 4BTC × 0.2BTC) = 2,000,000円

・売却益:100,000円(課税対象)


3. 特殊な取引の取扱い

(1)ハードフォークによる新規暗号資産の取得

・取得時点では課税関係は生じません

・売却時に譲渡所得として課税(取得価額は0円)

(2)マイニング、ステーキング、レンディング等による取得

・取得時点で時価相当額が課税対象

・必要経費(電気代、設備費等)の控除が可能

4. 実務上の留意点

(1)取引記録の保管

・取引所の年間取引報告書

・入出金記録

・取引明細書

これらの書類は7年間の保管が推奨されます。

(2)確定申告の要否

以下の場合、確定申告が必要となります:

・暗号資産取引による所得が20万円を超える場合

・事業所得がある場合など確定申告を行う場合

(3). 暗号資産取引の所得区分の詳細

暗号資産取引による所得は、取引規模や態様によって異なる区分となる場合があります。

A.雑所得として課税される場合

・一般的な個人投資家による取引

・副収入として時々行う取引

B.事業所得として課税される場合

・年間取引高が300万円を超える

・継続的に取引を行い、確実な帳簿管理がある

・事業として暗号資産取引を行っていると認められる

・暗号資産を決済手段として事業に用いている

取引高が300万円を超えている、帳簿がそろっているというだけで事業所得として認められるわけではない点に注意が必要です。事業所得には、営利性・反復継続性といった要件を満たす必要があり、税務調査の際には、取引規模や頻度、取引態様等を総合的に勘案して判断されます。

(4). 取得価額・売却価額が不明な場合の対応

過去の取引記録が十分でない場合の対応方法をご紹介します。

A.取引記録の復元方法

・暗号資産取引所への年間取引報告書の再発行依頼

・銀行口座の入出金履歴からの取引額の特定

・ブロックチェーンエクスプローラーでの取引履歴確認

B.記録が復元できない場合の対応

・売却時の取得価額が不明な場合、売却価額の5%を取得価額として計算することが認められています

ただし、この方法は課税所得が実態より大きくなる可能性があるため、可能な限り実際の取引記録の復元を試みることをお勧めします


5. 専門家による支援の重要性

暗号資産取引の税務処理は複雑化しており、以下のようなケースでは特に専門家への相談をお勧めいたします:

・取引履歴が不完全な場合

・海外取引所での取引がある場合

・大量の取引がある場合

・事業として行っている可能性がある場合

まとめ

暗号資産の税務上の取扱いは、取引形態や状況によって異なります。適切な申告のためには、日頃からの記録管理が重要です。不明な点がございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。

(注:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案については、必ず税理士にご相談ください)

浅井匠也公認会計士事務所

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